2024年6月28日
「非常勤講師のシャドーワーク問題」
授業の準備、授業前後の質問対応、提出物の添削などなど・・・。
これらは専任教員にも非常勤講師にも必要な仕事の一例です。
一般に専任教員の場合は出退勤時刻が決められていて給与は月給制で、時間外労働があれば割増賃金が支払われます。
一方で、非常勤講師の場合は「1コマ何円」という給与形態であることがほとんどです。
コマ単位で給与が支給された場合、授業時間外にどれだけ長く働いても給与が増えることはありません。
当然ですが、教室に行って授業をするだけでは教師の仕事は成り立ちません。
例えば理科の授業を考えてみましょう。
実験がある日は、教えようとする内容が生徒の前でうまく再現できるよう予備実験をする必要もありますし、生徒が使用する薬品を事前に取り分けておく必要もあります。
その日担当する授業時間以上に準備に費やさなければいけません。
また、教科書や資料集だけを使えばよいというわけではありません。
理解を助けるために自前のプリントや理解度確認のための小テスト問題作成などを行う必要もあります。
ある非常勤講師からあったのは「『授業50分につき準備50分』だが、これは最低限の時間」という声。
週あたりに担当する授業が2コマ(100分)だったとしたら授業だけで月400分。
これに授業と同じ時間の準備時間400分が加わりますから、週2コマ分の担当で少なくとも月800分(13時間20分)は働いているという計算になります。
もし、月額給与が28,000円(交通費除く)だとしたら時給換算すると約2,100円。
繰り返しになりますが「少なくとも」の時間で計算した時給です。
当然、準備時間や生徒対応の時間が増えれば、換算した時給は2,000円を割り込み、1,900円や1,800円・・・と下がって行くことは容易に想像できます。
また、定期試験ともなれば作問、採点、成績入力と大きな負担がのしかかります。
校内で終わらなければ自宅に持ち帰って仕事をする。
寝る予定の時間までに終わらなかったら徹夜でやる。
教師の世界ではそのようなことが当たり前に起きています。
持ち帰りの仕事にはタイムカードというものがありません。
自宅で仕事をしたことを客観的に証明することが難しいのが現状です。
「過労死しても労災は適用されないし、保障もない」
これが非常勤講師として働く人の「生の声」です。
ここで、ある短期大学で実際にあった授業時間外の労働に対する未払い賃金支給の事例を紹介します。
「授業1コマにつき、準備などの事務作業30分を含む2時間分の賃金を支払う」という契約で勤務していた非常勤講師の女性(労働組合員)に過去3年に遡り、タイムカードの記録に基づく授業時間外の労働に対する未払賃金139,500円が支払われたというものです。
実際、女性の授業準備時間は平均で90分であり、賃金は勤務実態に合っていませんでした。
非常勤講師が出退勤の時刻を正確に記録するような運用が行われているかどうか、その実態は各学校によって異なるかと思いますが、この非常勤講師が実状をどこにも訴えることがなかったら、適正な賃金が支払われることはなかったと思います。
【参考】
大月短大、シャドウワークへ支払い (首都兼大学非常勤講師組合)
女性講師の賃金およそ14万円未払い 大月短期大学に是正勧告 (TBS NEWS DIG)
1人であっても声を上げれば解決の道が見えてきます。
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